電通の鬼十則

経営相談師の機(ハタ)です。

 

電通に入社して1年目の女性社員の過労自殺が報じられています。

彼女は、試用期間後に正社員になると、10月以降1カ月の時間外労働が

労基署認定分だけでも約105時間と、過労死ラインとされる80時間を大

きく上回っていたそうです。

 

単体では世界最大の広告代理店である「電通」には、4代目社長吉田秀雄

によって1951年につくられた電通社員、通称「電通マン」の行動規範

とも言える「鬼十則」と呼ばれる非常に有名な言葉があるとのことです。

以下に、それを列記します。

 

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

 

いかにも高度経済成長時代の鼻息荒い企業の行動規範の典型である

と思われます。これ自体は、仕事に対する心構えを説いたもので、

罪は無いと言えます。しかし、これがそのまま企業体質として、

社員に享受を強いるものであったら、今日では「ブラック企業」

として社会的批判を受けてしまいます。

 

電通の企業風土がこのように厳しいものなのか、また女性社員の

勤務環境が特殊なものであったのかどうかは分かりません。しかし

少なくとも電通くらいの一流企業であれば、コンプライアンスの

通報体制や組織体制の整備、そして新入社員の研修教育にはそれら

の情報提供がなされていたものと思われます。にも関わらず、

このような不幸な結果を招いた事に対して、電通側の責任は免れない

と思われます。

 

このような体制や仕組みは、一度構築したからそれで良いという

ものではなく、絶えずそれを見直し、改善を加えていかなければ

機能しないのに等しくなってしまいます。

 

企業経営をするものにとっては、顧客満足(CS)はもちろんの

こと、従業員満足(ES)まで考慮しなければならなし、重い

責任があると痛感した報道でした。

 

ちなみに、電通には上記の「鬼十則」の他に「裏十則」なるものが

あるそうです。一つ一つ対比して書かれているので、これも考え

させられます。ご興味のある方は調べてみてください。

 

(参考)

http://www.nozomu.net/journal/000123.php

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コメント: 2
  • #1

    釣り好きアウトドアマン (金曜日, 18 11月 2016 06:16)

    電通の鬼十則は他の企業でもよく引用される内容ですね。大きい仕事に取り組めや、まわりを引きずり回せなどは、若い頃私も上司から言われましたし、自分も部下に使ったことがあります。この内容自体、仕事に取り組む姿勢を説くものとしてはそれ程悪いものではないと思うんですが、それが使われている環境や上司の方の行動など、使ってはいけない場所で誤った使い方をすると、俗にいうブラック企業化してしまう気がします。要はこの言葉が悪というより、それを使う方次第かなぁと。

    私自身も出来ていたか?と問われると、出来る限り頑張っていたとしか言えないんですが、私の理想を言うと、部下には少し難しい仕事にチャレンジさせるべきで、上司は部下が成功するよう支援するという形です。チャレンジということは少し本人の実力を超えた目標を掲げて頑張ることになるため、時には失敗したり行き詰ったり...当然上司のフォローが必要になります。このあたりの考え方がちょっと違った方が上司で、電通の鬼十則が適用されると...ブラック企業化してしまうかもしれません。

    私も何人か見かけたことがありますが、失敗するパターンの上司の方はこのような対応が上手くないんです。フォローも出来ず、部下を無能呼ばわりして叱咤し、失敗した場合の責任は部下に押し付けるようなことをしてしまいます。本来、仕事を与えたのはその上司ですから、上手くいかなかった場合はフォローするのが当然の責務ですし、もし失敗した場合はそのタスクを割り振った上司側にも大きな責任があります。ここを棚上げして、「お前は使えない」「なぜそんなことも出来ない」と怒鳴りつけるのは滑稽なんですが...そういう方には理解できないようです。そもそも、失敗するリスクなども考慮して仕事を与えるべきですし、そのリカバリープランも考えておくことが上司の仕事だと思うんですが、そういう方にとっては違うようです...

    と簡単に書きましたが、部下にチャレンジさせるのっていうのは結構大変なんですよね。私自身も中間管理職をしておりましたが、部下に仕事を与えたり、部下の目標設定をする場合にいつも悩むのが、この少しだけ背伸びをしたチャレンジ目標を上手く与えられるかって点でもありました。何かあった場合に自身がカバーできる範囲でないとフォローできませんから、常に自分自身に自問自答し、自身が責任を取れる範囲で仕事を割り振るってことにしていたんですが、本人の成長のためも、チームの業績を上げるためにも、このマージンを出来るだけ大きくしてあげたい...しかしあまり大きくしすぎるとフォロー出来ない...悩みましたね。まぁ、自身も相当チャレンジブルな目標を達成する命を受けていたりすることもあるため、そういった時には、部下達を集めて相談しながら少し無茶な目標を設定するしかないんですが、本当に無理な場合もあって、結構困りました^ ただ、私の場合はいい上司に恵まていたことが多く、上司に困ったと相談に行くと、「それくらい分かっいる。失敗したら自分が責任とるからチャレンジしてみろ」って逆に言っていってくれたり... かなり助かりました^

    正論で話をすると、このような形が理想だと思うのですが、時には上からとてつもない目標が降ってきたり、良くない上司に恵まれ?たり、移動したばかりで部下との信頼関係が出来上がっていなかったり、部下の力量が分からなかったり... いろいろな状況があるため、理想的な行動を取りづらいってこともありますからね。

    電通さんでは、きっと色々なことがあったんだと思います。広告宣伝が多様化して業界自体が厳しい状況の中、今までの十則を体現したような社風や、道理がわかっていない上司...経験の浅い社員...残念ですが、極論を言ったらすべてトップの責任です。それだけトップの責任は重いと思うんですよねぇ...

    電通さんの問題、メディアでは長時間労働ばかりクローズアップされますが、本質は経営側の考え方の問題。それが社風となったり、不適切な人材アサインに繋がったりしますから... いろいろ考えさせられます。

    裏十則は知りませんでしが、この機会に読ませていただきました。面白かったですが、あれを体現したら...会社はつぶれそうですね^

    長文失礼いたしましたm(_ _)m

  • #2

    機 尚志 (金曜日, 18 11月 2016 11:07)

    釣り好きアウトドアマンさん、長文のコメントありがとうございます。
    内容が厚く、コメントと言うより、ブログにしても良いような内容なので、ツイートで皆さんにシェアさせて貰いました。

    部下の扱いと言うか、指導は昨今大変ですね。昔は、それこそ今で言うパワハラなんか日常茶飯事で、残業を言いつけておきながら「何してる。飲み会に付き合え。仕事なんか明日の朝までにやっておけばいいから!」なんて上司に言われたものです。

    私なんか、何気なく部下に言った言葉を、会社のコンプライアンス窓口に通報されて、大変な目に遭いました。あ、そうだ!後日、このことをまたブログネタにして報告しますね。

    電通さんは、遺族に言われて社員手帳から鬼十則を削除するそうですが、社風まで変えることは無いと思います。釣り好きアウトドアマンさんの言うように、結局は運用する側の人間次第なのですから。